Summary
LCA Project(FY1998-FY2002)
経済産業省は、我が国で共通使用できる信頼性の高いLCAデータベースと、LCA手法の開発をめざして、平成10年度から5年計画で、国家プロジェクト「製品等ライフサイクル環境影響評価技術開発」(通称、LCAプロジェクト)を発足させました。
本プロジェクトは、
(1)我が国で共通使用できるLCA手法の確立
(2)パブリックデータベースの構築
(3)データ活用、データメンテを容易に行えるネットワークシステムの構築
を目的としました。
本プロジェクトは、その推進体制としてプロジェクト運営委員会のもとに、インベントリ研究会、インパクト評価研究会、データベース研究会を置き、各研究会横断事項の調整を目的に、LCA実務経験者で構成する企画小委員会、又、各研究会の活動を効率的に展開するために、いくつかの小委員会並びにタスクグループを編成し、プロジェクトを推進して参りました。さらにインベントリデータ収集拡充のため協力工業会にデータ提供を要請し、賛同を得てデータ収集をいたしました。
1)工業会インベントリデータ
参加22工業会並びに協力工業会のデータ収集の結果、サブシステム単位でのインベントリデータ総数は約300項目となりました。環境排出物質項目については14物質(CO₂、CH₄、HFC、PFC、N₂O、SF6、NOx、SOx、ばいじん/粒子状物質、BOD、COD、全リン、全窒素、懸濁物質)を収集目標として収集しました。
2)調査参考インベントリデータ
共通インベントリ項目として、
(1)資源採掘、エネルギー、輸送に関するデータの調査とLCIデ-タ化、
(2)金属、プラスチックの加工プロセスデータ
等を調査収集しました。
1)静脈部門のLCI方法論の整理
等を整理し、静脈系LCI手法を提案しました。
2)静脈部門でのインベントリデータ調査
使用済み自動車、家電、OA機器、および使用済み飲料容器(スチール缶、アルミ缶、ガラス瓶、ペットボトル)、建築廃材を対象としたそれぞれの中間処理工程(破砕、選別、プレス等)について、インベントリ化実施
b.焼却・埋立て等の廃棄物処理における環境負荷原単位調査
自治体における「収集・運搬」、「焼却処理」の「ごみ組成」および「大気汚染物質」の解析をもとに、製品由来およびプロセス由来を併用した環境負荷推定モデルとしてのインベントリ化を実施。
等各プロセスのインベントリデータをバックグラウンドデータとして整理しました。
c. 無害化処理法に関するインベントリ調査
静脈LCI手法論として、最終段階を無害化におく提案を行った。このためのインベントリデータとして、無害化工程として、焼却灰、焼却飛灰から重金属を分離・回収(無害化処理)する場合のプロセスを机上検討し、無害化処理プロセスのインベントリとして推定した。対象重金属は、Cu、Pb、Zn、Cd、Hg、(DXN)であり、本インベントリ結果は、静脈系LCIを検討する場合の参考データとして適用しました。
データ入力用ソフトウエアを開発し、各工業会へ提供された。その結果、データ提供工業会は本ソフトを利用し入力を実施して、事務局へデータ提供を実施しました。
LCAデータベースを電子手段にて利用者に提供できるシステムとして本データベースを構築しました。 その構成は、データ入力クライアント、データベースサーバ、データ提供用サーバからなり、セキュリティに配慮したデータベースシステムとして構築しました。
本研究会では日本を対象とした被害算定型の影響評価システムの開発を目指した調査研究を行いました。このシステムは大きく、
に分けられます。
これらのアプローチは必要とされる知見と調査手順は全く異なるため、本研究会の下に小委員会を設けて各専門性を活かした検討を行いました。
委員会にて設定した4つの保護対象(人間の健康、生物多様性、一次生産量、社会資産)への被害に関連づける影響カテゴリとして、(1)地球温暖化,(2) オゾン層破壊、(3)酸性化、(4)光化学オキシダント、(5)都市域大気汚染、(6)有害化学物質、(7)生態毒性、(8)富栄養化、(9)土地利用、(10)資源消費、(11)廃棄物等の項目を抽出し、環境負荷物質の排出と環境カテゴリを関連付ける為の特性化係数リストを整理し、本プロジェクト推奨リストの選定を行いました。
又、ダメージ関数小委員会において、各ダメージ専門家と調査機関の連携活動により、インパクトカテゴリ毎にそれぞれの専門領域において被害量の算定手法の検討並びに各環境被害の定量化を実施しました。その結果、プロジェクト提案としての保護対象への被害量係数を構築しました。
インパクト評価手法を検討するにあたって、環境負荷物質から環境カテゴリの関連付けを行い、次に環境カテゴリから保護対象への関連付けを行う。
保護対象を(1)人間の健康、(2)社会資産、(3)生物多様性、(4)一次生産量、の4項目に設定し、これらの間の重要度比較し、統合化指標を策定するための手法として、「コンジョイント分析法」を適用しました。これらは経済評価小委員会で研究され、(1)予備調査、(2)本調査を経て、重み付け係数を得ました。
日本版被害算定型環境影響評価手法として、検討経緯並びに利用方法等の解説を取り纏め、(1)環境カテゴリに対する特性化係数リスト、(2)保護対象に対する被害量係数リスト、(3)統合評価係数リストの3種類の係数リストを構築し、プロジェクトの提案手法としました。これらは未だプロトタイプの提案であり、今後の幅広い活用と実証を持って更に精査し、評価手法としての定着を図る必要があります。
事例研究を通じて、欧米の統合化手法と比較検討し考察を加えた結果、エンドポイント評価手法での構築の考え方は、最新の欧米の検討方向と一致し、且つ、欧米と我が国の環境バックグラウンドの違いを的確に捉えた日本版評価手法として評価できるものと確認されました。